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    事業承継メルマガ003.10分と100分

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コラム

2026.1.23

事業承継メルマガ003.10分と100分

※このメルマガは書籍「オーナ社長のための事業承継」を購入いただいた方向けに配信しております。共著者と交互に配信しているため、奇数ナンバーのみ当社HPで掲載します。フルバージョンをご希望の方はぜひ書籍を購入ください。

1.事業承継と先入観

新年あけましておめでとうございます。本年もどうぞよろしくお願いいたします。

さて先日、新しい事業承継のご支援に伺った時のお話です。相談者は現社長の長女様で、顧問税理士を通じてのご紹介でした。長女様はこれまでずっと経理事務を担当されてきたため、営業や現場の仕事については全く把握されていないとのことでした。社長がご高齢であること、また去年大きなご病気もされたことから、急いで事業承継を進めたいというご相談でした。

長女様と顧問税理士との事前打ち合わせでは、株式は長女様が相続し、社長職は一番ベテランの従業員にお任せしたいとのことでした。長女様によると社長もその方針で問題ないそうです。2週間後に社長を交えて事業承継計画を作成していくことになりました。

お伺いすると、社長はお元気そうに見えましたが、ご病気の影響で麻痺が残り、外出もままならないご状況でした。社長は身体を悪くなった自分が不甲斐ない、従業員と長女で今後頑張ってほしい、など、熱心にお話しくださいました。

ところが株式の話になった際、社長は「次の社長を継いでくれる従業員に、社長の座も株式もすべて渡すつもりだ」とおっしゃったのです。これは事前に伺っていた長女様のご意向とは異なるものでした。

2.経営者は考え抜いた末に判断している

同席していた顧問税理士の先生はすぐに「税金面からも、株式はご家族で継がれた方がよろしいかと思います」と社長に伝えました。

社長は一瞬考え込んだ後、「いや、雇われ社長にするわけにはいかない。会社を任せる責任を担わせるのであれば、株式も渡さないと従業員には不義理だ」。場には重い空気が流れました。

事前に伺っていた話と、ご本人の意向が正反対であるなどは、事業承継ではよくあることです。私は長女様の方に目線を配りましたが、長女様は私の方を一瞬見た後うつむいてしまいました。おそらく長女様は先入観で株は自分に来ると思っていて、社長には確認していなかったのでしょう。これもよくあるお話です。

私は一旦話題を変え、今後の会社の方向性について再度お聞きしました。ここ数年の取引先の減少について伺っていくと、社長の一番の懸念は、これまで顧客開拓をすべてご自身で行ってきたこと、ご病気以降は新規開拓が止まっていること、そして従業員にはルート営業しか経験させてこなかったことでした。このままでは自然減で取引先は減っていく一方であろうと。

社長は叩き上げの現場志向で、訪問営業一筋でやってこられたそうです。しかしこの会社の商品は非常に個性が強く、特定の市場にはまれば販路拡大が十分に見込めると感じました。私はフォーム営業などコストの低い手法をいくつかご提案しました。いわゆるプル型の営業です。 

この知見は社長にとって新鮮だったようで、「すぐにでも取り組んでみたい」と目を輝かせ、話は大いに盛り上がりました。

3.90分の差でより良い選択肢を検討できる

ひとしきり販路拡大で盛り上がった後、私は社長にお聞きしました。「この新しい営業を展開した場合、3年後、5年後の売上目標はどうお考えですか?」。社長は電卓を弾き、「1.2倍から1.3倍は堅いだろう」とおっしゃいます。

「その成長を担う後継社長には大きな期待と負担がかかることになりますが、どのように報いていかれますか?」

社長は少し考え、長女様に「どう思う?」と尋ねました。長女様はすぐ私に目線を送ってこられました笑
「後継社長が挙げた利益の一定割合をプールし、退職金の原資として積み立てていくのはいかがですか?言わば究極の歩合制です。会社を儲けさせた分と自分へのバックが連動するのであれば、やりがいを持って取り組めるのではないでしょうか」。 

社長は明るい表情になり、「なるほど、株式まで押し付けてしまうのは逆に気の毒かもしれないな」と、ご自身で方針を転換されたのでした。

今回のケースでお伝えしたいのは、同じ提案でも最初の10分で話すのか、100分後に話すのかで、まったく受け止め方が変わるということです。経営者の皆様は何十年も会社を運営してこられた自負をお持ちです。冒頭の「株式も従業員に」というお考えも、熟考の末のご判断だったはずです。例えそれが明らかに不利な判断だったとしても、一旦は受け止めて、様々な角度から対話を積み重ね、社長の意図を解きほぐし理解していく必要があります。

前回のメルマガで「これからは成長承継が大事」とお伝えしました。ベテラン経営者は新しいことに後ろ向きだという統計もありますが、実際にお話しすると、事業拡大に非常に前向きな方が多いのです。当然、後継者に一番いい形でバトンを渡したいとの想いからでしょう。その想いを引き出すことで、後継者に最良の形を一緒に考えていくことができます。

そのためには事業承継の知識だけでなく、社長の一番の悩み(今回は新規開拓でした)に助言できる知見も大切になってきます。
今回御覧頂いた後継者の方、支援者の方はぜひご参考ください。

合同会社そうわ経営パートナー 代表社員 尾形吉通

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